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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)9640号 判決 1988年7月26日

原告

村田暁彦

被告

有限会社大出解体工業

主文

一  被告は原告に対し、二八六万四三六四円及びこれに対する昭和六〇年三月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、一〇〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年三月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  1につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 日時 昭和六〇年三月二六日午前一〇時過ぎ

(二) 場所 東京都杉並区高円寺南五丁目一七番一三号所在の「さりいビル」建築工事現場

(三) 加害車 三菱パワーシヨベルMS〇七〇―八型のアームにグラツプルを取り付けたもの(以下「本件フオークグラブ」という。)

運転者 被告代表者大出一郎(以下「大出」という。)

(四) 事故態様 大出が前記工事現場における木造建物の解体により発生した鉄筋、ブリキ等(以下「スクラツプ」という。)を原告運転の四トン積みダンプカー(以下「本件ダンプカー」という。)に積み込むため、その右側方に本件フオークグラブを停車させ、そのグラツプル(以下「爪」という。)でスクラツプを掴んで積み込む作業(以下「積込作業」という。)をしていた際、原告が、右積込作業を誘導するため、本件ダンプカーの左側面において、右足を後輪のタイヤに左足を鉄製のバーにそれぞれかけて、左手で荷台のあおりを逆手(拇指を荷台の内側に向け、その余の指を荷台の外側に向けた状態)に握つて、右手で大出に対して合図を送つていたところ、約三回の積込作業が終わり、四回目の積込作業のときに、スクラツプを掴んだままの爪が突然降りてきて原告の左拇指に当たつた。

2  責任原因

本件フオークグラブは自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)二条一項にいう自動車に該当するものであるところ、被告は、本件事故当時、本件フオークグラブを所有し、これを自己のために運行の用に供していた者であるから、自賠法三条の規定に基づき、原告が本件事故により被つた後記損害につき賠償責任を負うものである。

3  受傷状況

原告は、本件事故により全治七月を要する左拇指不全切断の傷害(以下「本件傷害」という。)を受け、自賠法施行令二条別表所定の後遺障害等級一〇級七号に該当する後遺障害(以下「本件後遺障害」という。)が残つた。

4  損害 合計一九〇四万八五九二円

(一) 逸失利益 一一〇四万八五九二円

原告は、昭和二九年八月生まれの男子であり、本件後遺障害のために将来にわたり逸失利益相当の損害を被つたものであるところ、本件後遺障害による原告の労働能力喪失率は二七パーセントとみるべきであり、逸失利益算定の基礎収入として、本件事故前の昭和六〇年一月から三月まで三月間の平均月収一六万五三三三円を採用し、就労可能年数を満六七歳までの三七年間と考えるべきであるから、新ホフマン方式(係数二〇・六二五四)により年五分の中間利息を控除して逸失利益の現価を算定すると、一一〇四万八五九二円となる。

(二) 慰藉料 六〇〇万円

原告が、本件傷害を受け、その治療のために入通院することを余儀なくされた間の苦痛を慰藉するためには二〇〇万円、本件後遺障害によつて被る苦痛を慰藉するためには四〇〇万円、合計六〇〇万円の慰藉料をもつてするのが相当である。

(三) 入通院雑費 三〇万円

原告が本件傷害を治療するため入通院した際に要した雑費は三〇万円を下らない。

(四) 弁護士費用 一七〇万円

原告は、弁護士である原告訴訟代理人に本件訴訟の提起と追行を委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束したが、このうち本件事故と相当因果関係のある損害として被告が賠償すべき額は一七〇万円である。

5  よつて、原告は、被告に対し、前記の損害合計一九〇四万八五九二円のうち一〇〇〇万円及びこれに対する本件事故の日の後である昭和六〇年三月二七日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(事故の発生)の(一)ないし(三)の各事実は認める。(四)の事実のうち、大出が積込作業をしていたこと及び約三回の積込作業を終えていたことは認めるが、その余の事実は否認する。積込作業においては、誘導の必要はなかつたし、ダンプカーの荷台のあおりに沿つてその高さを補充するため最初から高さ約九〇センチメートルのパネルを立てていたから、原告の主張するような姿勢で本件事故が発生することはありえない。

2  同2(責任原因)のうち、本件フオークグラブが自賠法の適用を受ける自動車であること及び被告が賠償責任を負うことは争う。

3  同3(受傷状況)の事実は不知。

4  同4(損害)の主張はいずれも争う。

三  抗弁

1  免責

大出は、本件フオークグラブの爪を開いて、荷台に積み込んだスクラツプを押し込む作業(以下「押込作業」という。なお、積込作業と押込作業を併せて「本件作業」という。)をしていた際、原告が見当たらなかつたため、作業員の訴外大野博に「村田はどうした。村田はどこにいるんだ。」と聞くと、同人は、原告が居眠りしている旨を伝えたので、大出が大声で原告の名を呼んだところ、しばらくは何の応答もなかつたが、突然、本件ダンプカーの左側の荷台の袖(荷台の運転席に面した部分で運転席の天井とほぼ同じ高さとなつている部分)の上部に、まず原告の手、次に頭が出てきたと同時に、原告が左手を押さえて痛いと叫んだ。右の状況からすると、原告は、大出から呼ばれたので、寝ぼけたままの状態で荷台の袖から本件ダンプカーの荷台に上がろうとしたため、押込作業によつて撥ねたスクラツプが荷台の袖の鉄板を握つていた原告の左拇指に当たつて本件傷害が生じたものと推察される。大出としては、原告がそのような行動をとることは全く予想できなかつたし、本件作業中に作業員がフオークグラブの稼働域内に立ち入ることを禁止していた。以上のように、本件事故は、原告のみの過失によつて発生したものであり、本件フオークグラブの構造上の欠陥、機能の障害とも無関係であるから、被告は、自賠法三条ただし書の規定に基づいて、本件事故により原告に生じた損害につき賠償責任を負うものではない。

2  損益相殺

原告は、本件事故に関し、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)から休業補償給付として五八万四〇一二円、障害補償給付として二一二万二一六八円、合計二七〇万六一八〇円の支払を受けたほか、立野建設株式会社から三〇万円、菅原建業有限会社(以下「菅原建業」という。)から五〇万円の各支払を受けた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実はすべて否認する。

2  同2の事実のうち、菅原建業から五〇万円の支払を受けた事実は否認し、その余の事実は認める。原告と菅原建業との間において、菅原建業が原告に対し、本件事故に関し五〇万円を分割して支払う旨の訴訟上の和解が成立した事実はあるが、その支払は全くされていない。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一1  請求原因1(一)ないし(三)の事実は、当事者間に争いがない。

2(一)  同(四)の事故態様のうち、大出が積込作業をしていたこと及び本件事故前に約三回の積込作業を終えていたことは当事者間に争いがない。

(二)  先ず、本件事故の態様について判断することとする。

(1) 被告代表者大出一郎本人尋問の結果及び検証の結果並びに弁論の全趣旨によれば、積込作業を三回行うと、本件ダンプカーの荷台のあおり(高さ約三九センチメートル)を超える程度のスクラツプが積み込まれること、それ以上のスクラツプを積み込むためには荷台のあおりに沿つてその高さを補うためにパネルを立てる必要があること、積み込まれたスクラツプの量が多くなればなるほどパネルを立てることは困難になること、スクラツプを全く積み込まない状態でもパネルを立てることは可能であること等の事実が認められ、右事実に証人野内清次の証言を総合すれば、本件事故当時には既に本件ダンプカーの荷台のあおりに沿つて高さ約九〇センチメートルのパネルが立てられていたものと推認することができる。

(2) 被告代表者大出一郎本人尋問の結果及び検証の結果によれば、本件フオークグラブの爪でスクラツプを掴んだ際、爪の前後・左右に折れ曲がつた鉄筋等がはみ出した状態になることが認められるところ、原告本人尋問の結果(第一回)及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第三号証、同第四号証の一、二(同第四号証の二については原本の存在をも含む。)によれば、原告の受けた本件傷害は左拇指に認められるだけであり、その他の部分については全く受傷していないことが認められる。そうすると、本件事故当時、原告の左手を除いた身体は、受傷の可能性のない範囲にあつたものと認められる。

(3) 右(1)及び(2)で認定した事実に証人野内清次及び同加藤哲也の各証言、被告代表者大出一郎本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、本件傷害は、原告が本件ダンプカーの荷台の袖から荷台に上がろうとした際に、押込作業によつて撥ねたスクラツプが荷台の袖の鉄板を握つていた原告の左手の拇指に当たつたことにより発生したものと認められる。

本件事故の態様は以上のように認められ、原告本人尋問の結果(第一、二回)中右認定に反する部分は前掲証拠と対比して採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

二1  成立に争いのない乙第三号証によれば、本件フオークグラブが自賠法二条一項にいう自動車に該当することが明らかであるところ、本件事故当時、被告が本件フオークグラブを所有し、これを自己のために運行の用に供していたことは被告において明らかに争わないから、自白したものとみなす。そして、前記一認定の事実に原告本人及び被告代表者大出一郎本人尋問の各結果を総合すれば、本件事故が本件フオークグラブの運行によつて発生したことを認めることができる。

2  そこで、被告の免責の抗弁について判断することとする。

本件事故の態様に関する事実は、前記一2(二)において認定したとおりである。

そして、証人野内清次の証言、被告代表者大出一郎本人尋問の結果及び検証の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、原告が本件ダンプカーの荷台に上がろうとしたのは、大出が原告を呼んだためであること、本件フオークグラブの運転席からの見通しはよく、前示のように本件ダンプカーの荷台にパネルを立てた状態であつても、原告が右荷台の袖に接近し、これに上がろうとする時点において、その姿を発見することが可能であつたこと、大出は、原告を大声で呼んだにもかかわらず、その後の原告の行動に全く注意を払うことなく、そのまま漫然と押込作業を続けたこと等の事実を認めることができる。

ところで、フオークグラブの運転者は、建物の解体によつて生じた廃材、スクラツプ等をその爪を用いてダンプカーに積み込む作業又は押し込む作業をするに当たつては、右爪又はこれに掴まれ若しくは押さえられたスクラツプ等が人に接触等するときには、この者の生命又は身体等に重大な危害を加える危険がきわめて大きいのであるから、人が近付くことを知り又は知りえたといえる場合には、直ちにフオークグラブの操作を中止するなどして、人身事故の発生を未然に防止すべき注意義務を負つているものというべきところ、前示認定の事実によると、大出は、原告を呼んだのであるから、原告が本件ダンプカー、したがつて本件フオークグラブの爪又はスクラツプ等に近付くことを予想し、その行動に留意すべきであり、留意していたとすれば、原告が本件ダンプカーの荷台の袖に接近し、これに上がろうとした時点において原告が本件フオークグラブの爪又はスクラツプに近付くことを知りえたものといえるから、大出には右注意義務懈怠の過失があつたものというべきであり、たとえ大出が原告を含む被告の従業員に対し、本件事故前に、一般的、抽象的にフオークグラブの稼働中は稼働域内に入らないように注意を与えていたとしても、右判断を左右するに足りないものというべきである。したがつて、被告の免責の抗弁は理由がないというべきである。

三  請求原因3の受傷状況について判断する。

前掲甲第三号証、同第四号証の一、二及び成立に争いのない甲第五号証の一、二並びに原告本人尋問の結果(第一、二回)を総合すると、原告は、本件事故により本件傷害を被り、昭和六〇年三月二六日東京医科大学病院に入院して再接着手術を受け、同年一〇月二九日に症状が固定するまで約一四日間の入院治療及び約四〇回の通院治療を受けたが、左拇指の知覚がほぼ失われたほか、左拇指の指節間関節(IP)の可動範囲が伸展及び屈曲ともに制限され、中手指節間関節(MP)が一五度に固定される本件後遺障害が残存するに至つたこと、労災保険において本件後遺障害は障害等級第一〇級に該当すると認定されたこと等の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

四  右の事実に基づき、原告が本件事故により被つた損害について判断する。

1  逸失利益 六五六万五七五七円

前掲甲第四号証の一、二及び原告本人尋問の結果(第一回)によれば、原告は、昭和二九年八月二〇日生まれの健康な男子で、本件事故当時満三〇歳、症状固定時満三一歳であつたこと、成蹊大学を二年で中退した後、外国での放浪生活をするために定職に就かないで会員制クラブの支配人、ピアニスト、トラツクの運転手などを転々としたこと、被告には昭和五九年一一月二一日に入社したこと等の事実が認められる。そして、右認定事実、前記四で認定した受傷状況及び成立に争いのない甲第六号証の一ないし三によれば、原告は、本件後遺障害のため、症状固定時の満三一歳から満六七歳まで三六年間にわたり二〇パーセントに相当する労働能力を喪失したこと、また、原告の本件事故前の月収は昭和六〇年一月から三月までの三月間の平均月収一六万五三三三円を下廻るものでないことが認められるから、これを基礎収入とし、ライプニツツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、右三六年間の逸失利益の現価(なお、本件事故の日から症状固定の日までの間が一年に満たないことを考慮して、その間の中間利息は控除しないこととする。)を計算すると、次の計算式のとおり、六五六万五七五七円となる(一円未満切捨)。

一六万五三三三円×一二×〇・二〇×一六・五四六八=六五六万五七五七円

2  慰藉料 四〇〇万円

前記認定の本件事故の態様、本件傷害の内容と程度、治療の経過、本件後遺障害の内容と程度、原告の年齢その他本件審理に顕われた一切の事情を勘案し、本件事故により原告が被つた精神的苦痛に対する慰藉料は、四〇〇万円と認めるのが相当である。

3  入院雑費 一万四〇〇〇円

前記四で認定した入院期間を考慮すると、入院雑費としては一日当たり一〇〇〇円、合計一万四〇〇〇円と認めるのが相当であるが、通院雑費については、これを認めるに足りる証拠がない。

4  過失相殺 五割

原告本人尋問の結果(第一、二回、但し、後記措信しない部分を除く。)及び被告代表者大出一郎本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨に照らすと、原告は、建物の解体を業とする被告に昭和五九年一一月入社して以来、建物の解体によつて生ずる廃材、スクラツプ等を積載したダンプカーの運転に従事していたものであり、フオークグラブがその爪で右廃材、スクラツプ等を掴んでダンプカーに積み込む作業又はこれらを押し込む作業をしているときにそれに近付くことは危険なものであるとの認識を有するに至つていたこと、大出から本件事故前に一般的、抽象的にではあるが、フオークグラブの稼働中は稼働域内に立ち入らないようにとの注意を受けていたこと等の事実を認めることができ(原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は、被告代表者大出一郎本人尋問の結果と対比して措信することができない。)、右事実と前記認定の本件事故の態様についての事実とを併せ考えると、原告としては、大出から呼ばれ、本件ダンプカーの荷台の袖から荷台に上がるに当たつては、本件フオークグラブが本件作業のために稼働していたのであるから、その爪及びこれが押さえ込んでいるスクラツプ等の位置、状況等を確かめ、それらとの接触ないしは衝突を避けるように慎重に行動すべきであつたものであり、また、かかる行動をとりうる余地があつたものといえるから、本件事故の発生については、原告にも過失があつたものというべきであり、被告代表者大出一郎の前示の過失と対比すると、原告の過失の割合は五割と認めるのが相当であるというべきである。したがつて、右1ないし3で認定した損害合計一〇五七万九七五七円から過失相殺により五割を減額し、損害額を五二八万九八七八円と認めるのが相当である(一円未満切捨)。

5  損害の填補 二六七万五五一四円

原告が労災保険から休業補償給付として五八万四〇一二円、障害補償給付として二一二万二一六八円、合計二七〇万六一八〇円の支払を受けたほか、立野建設から三〇万円の支払を受けた事実は当事者間に争いがない。

ところで、原告本人尋問の結果(第一回)及び弁論の全趣旨によると、原告は、本件事故により本件傷害を負い、少なくとも事故の日から昭和六〇年七月末までの四月間稼働することができなかつたため、六六万一三三二円(前記本件事故前の平均月収一六万五三三三円の四月分相当額)の休業損害を被つたが、これについては、労災保険から給付を受けたことにより填補されたものとして、本訴において請求していないことが明らかであるから、右休業補償給付の全額を逸失利益の填補に当てるのは不当というべきであり、そのうち右休業損害の五割の三三万〇六六六円を超える二五万三三四六円の限度で右障害補償給付とともに前記原告の逸失利益を填補したものというべきである。

また、原告と菅原建業との間において、菅原建業が原告に対し、本件事故に関し五〇万円を分割して支払う旨の訴訟上の和解が成立した事実は、当事者間に争いがないが、訴訟上の和解が成立したとしても、現実の支払がない以上、これをもつて損害の填補とすることはできないところ、原告が菅原建業から五〇万円の全部又はその一部の支払を受けた事実はこれを認めるに足りる証拠がないから、損害の填補があつたものとはいえない。

6  弁護士費用 二五万円

弁護の全趣旨によれば、原告は、本件事故に基づく損害賠償請求権につき被告から任意の弁済を受けられなかつたため、弁護士である原告訴訟代理人に本件訴訟の提起と追行を委任し、そのための費用及び相当額の報酬等弁護士費用の支払を約束したことが認められるところ、本件訴訟の難易度、認容額、審理の経過、その他本件において認められる諸般の事情に鑑みると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は二五万円と認めるのが相当である。

五  以上によれば、本訴請求は、原告が被告に対し二八六万四三六四円及びこれに対する本件事故の日の後である昭和六〇年三月二七日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから、これを認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本分を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 柴田保幸 原田卓 竹野下喜彦)

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